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2009年02月05日
 NO WE CAN’T ! -2

前回のブログ「NO WE CAN’T !」では、世の中にはいかに拒絶型の発想が蔓延しているかについて触れた。

今や基本発想はすべて「NO WE CAN’T !」で出来ているといっても過言ではないというものである。

ただ私は「NO WE CAN’T !」を「YES WE CAN !」と対峙する悲観論として展開した。

確かにそうだ、と思われる事例に事欠かないが、日本語コミュニケーションの世界では、どちらも、これほどはっきりとしたことばが発せられるわけではない。

「YES WE CAN !」も「NO WE CAN’T !」も英語文化圏の発語であって、このような二項対立的な問い詰め方への対応が、われわれの日常性のなかに顔を出すことは滅多にない。

われわれの通常会話の中で「YES WE CAN !」と発信することが滅多にないかわりに、「NO WE CAN’T !」とストレートに発言することもまた滅多にない。

そもそもわれわれは、「YES」も「NO」もはっきりと言うのは苦手である。

「YES」の方は、単なるうなずきの部類であって、明快な意思表示とは認識していない場合が多い。

したがって、「YES」は案外気楽に多発される。

しかし「NO」は、明快な拒絶の意思表示だ。

表面だって摩擦が生ずるのを嫌う風土の中では、なかなか言いにくい。

緊張した空気がただようことを嫌う文化が厳然と横たわっているからだ。

「NO」には「それは何故か」という説明責任が伴う場合が多いから、どうしても緊張感がただようのだ。

20年ぐらい前になるだろうか、石原慎太郎氏と当時ソニー会長だった盛田昭夫氏が共同執筆した「”NO”と言える日本」というエッセイがあった。

バブル絶頂期だった背景もあって、アメリカに堂々と「NO」と云えるだけの実力を示そうというようなナショナリズムを謳ったものだった。

まあ、ナショナリズムはともかく、暗に日本ではなかなか面と向かって「NO」とは云えない文化があることを前提とした主張だった。

日本、日本と言いながら、対立を恐れぬ明快さを求めるという点では極めて西欧型の発想ではあった。

「YES WE CAN !」とはっきり言える文化は「NO WE CAN’T !」ともはっきり言いきれる西欧型の文化とつながっている。

日本型の文化では、たとえ答えは「NO WE CAN’T !」であっても、直截そうは言わない。

「はいよく分かりました。前向きにその方向に向かいます。しかし、私はそう思ったとしても、どこそこの部署にはこれこれの事情があり、昔からのあれこれもあって、すぐに実行されるのは極めて難しい。とりあえず持ち帰って、よく検討し、後ほどご連絡させていただきます。」となる。

出だしは「YES WE CAN」で始まりながら、「BUT」に続く後段は「NO WE CAN’T 」である。

一旦こういう答えが出た後は決して状況が動くことはない。

要はもともと「NO WE CAN’T」なのである。

そこが分からないと鈍感のレッテルを貼られる。

「YES WE CAN」で始まり、「NO WE CAN’T」を含意してあいまいに終わる応答が極めて多いのである。


さて、本気の「YES WE CAN !」を引き出すためには、まず真正面から「NO WE CAN’T !」と発言することから始めなくてはならないのではないか。

まずは「NO WE CAN’T !」をはっきりと明示することの方が、「YES WE CAN !」を言う前に必要なのかもしれない。

「NO WE CAN’T !」と発言する覚悟とエネルギーは、「YES WE CAN !」を叫ぶに要するそれに匹敵する。

ありとあらゆる所に蔓延する事実上の「NO WE CAN’T !」事象を、まずはきっちりと発言し、立場を明快にすることから始めるべきではないのか。

その覚悟なしには「YES WE CAN !」は遠いのかも知れない。

「NO WE CAN’T !」を面と向かって告げる場面を必死で通り抜けてこそ、「YES WE CAN !」にも重みと真実みと、そして人の心を動かすリアリティが生まれてくるに違いない。

私たちは「NO WE CAN’T !」でさえ、おそらくは真実の叫びとして言ってきてはいなかった。

まずは「NO WE CAN’T !」を本気でまっすぐに言ってみることから始めるべきなのだろう。


旧い文化のコンテクストはシンプルではない。

オバマ氏の演説をたとえどんなに名訳であっても、もし日本語で聞いてみたら、同じ高揚感を得るのは難しいのかもしれない。NO WE CAN'T である。



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